マゼンダ・エンプレス

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トントン と部屋のドアが叩かれた。 「あら、結構早かったわね…」植原は指輪から視線を離すと どうぞ と返事した。 「お忙しいところ失礼します」 「平気よ。それより やっぱり私考えたんだけどあの頼んどいたドレスの色、黄色じゃなくて鮮やかなマゼンダにしようかと思うんだけど貴方どう思……」 振り向いた植原は部屋に入って来た人物を見て一瞬驚いた。てっきりさっきの従業員の女が戻って来たとばかり思っていたからだ。 「お久しぶりです、植原さん」 「鞠奈ちゃん!どうしてここに?」 「事務所の人から植原さんが結婚するって聞いたので挨拶をしたくて…。この場所に植原さんが居るのは植原さんがよくここのアーケード街を利用してるって白鳥さんから聞いたので もしかしたら結婚式で着るドレスもここのレンタルウエディング店で借りるんじゃないかと思って来てみたんです。この店人気だし…。植原さんがいらっしゃって良かった」 「そう、わざわざ探してに来てくれてありがとうね。突然辞めたから驚いたわよね」 「本当に…」財前は小さく笑った。 「あっ、ねぇ鞠奈ちゃん、このドレスどうかしら?結婚式で着ようと思ってるんだけど」 「素敵だと思います。植原さんの肌の色とも合ってますし」 「本当!?なら良かったわ!現役の人気モデルさんがそう言ってくれるなら間違いないわね!安心して胸を張ってこのドレスを着て歩けるわ!」 植原は満面の笑みで言うと また くるくるっ と回ってみせた。
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