マゼンダ・エンプレス

6/7
前へ
/131ページ
次へ
「あんまり驚かれないんですね」 「充分驚いてるわよ。驚きすぎてどんな顔して良いか分からないだけ」 「違うでしょ」財前は植原を真っ直ぐ鋭く見つめた。 「貴方は春野さんが亡くなった事を初めから知ってた、だから大して驚けないのよ。だって、貴方が春野さんを殺したんだから」 「馬鹿な事言わないで!桃佳は私にとって大切な仕事のパートナーだった子よ!?そりゃ仕事の話し合いで少し口論になったりする事は多々あったけど、だからってそんな事してやろうなんて考えた事は一切ないわ!!」 「その大切な仕事仲間だった子が遺体で見つかったって言うのに悠々と結婚式をあげるなんて凄い度胸ですね。私だったらそんな余裕ないですよ。きっとショックのあまり今頃救急車で病院に搬送されてるわ」 「何回も言うけど私は犯人じゃないわ。決めつけないで」 「貴方の事 怪しく思って春野さんの事こっそり聞き回ってた時に、よく春野さんの衣装を担当されてた方に聞いたらこんな事言ってました。『服で隠れてる部分の春野さんの身体にはいつも何処かしら必ず痣があったわ』って」 「それがなに?」 「社長を問い詰めて聞いたらこんな事言ってましたよ。植原さんは以前勤めていた事務所で担当していたモデルの子が仕事で何かミスをするたびによく裏に連れてって叩いたりして叱りつけていたって。それが原因で植原さんはその事務所をクビになって もう二度同じ過ちは繰り返さない事を条件に人の良いうちの社長が貴方をうちの事務所に雇ったって話しを」 植原の表情があからさまに曇った。 「それと春野さんとよく一緒に仕事していたってモデルの子からこんな話しも聞いたんですが、植原さん 仕事が終わるたびにたびたび何処かに春野さんを連れてってたそうですね?それも春野さんが撮影を止めてしまったりとか何かしらミスを犯した時だけ…。春野さんを何処に連れてってたんです?春野さんに何をしていたんですか?」 「…ただ話しをしていただけよ。桃佳がミスをするのは桃佳自身に何か悩み事があるんじゃないかって心配して。その事で悩み相談を聞いていただけ」 「戻ってくるたび春野さんの目は赤くなってたそうですよ。まるで泣き腫らしたみたいに」
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加