マゼンダ・エンプレス

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「まさか…私が桃佳を痛めつけてたんだろうって思ってるんじゃないでしょうね?」 「少し前、夜中だったんですけど とある男性が仕事帰りに春野さんが倒れていた橋の上を通ったそうです。その日は満月がとても綺麗な夜で、もっとよく見ようと橋の手すりに手をついて見上げてから ふと下を見て春野さんの遺体を見つけました。驚いて咄嗟にその場から逃げてた時 橋の近くを すらっと背の高い女性が男性と一緒に遺体の側を走り去って行くのを目撃したそうです。あれって、植原さんの事じゃないんですか?」 「何を証拠に…。私みたいな体型の女の人なんて世の中あちこち居るでしょ?被害妄想にも程があるわ!」 「橋の近くに設置されてる防犯カメラを調べてもらったら 逃げてった男女が誰かなんてすぐに分かるわ。と言うか現に今警察の方に調べてもらってますけどね。貴方が捕まるのも時間の問題よ」 「……くっ……くはっ……あははっ…」植原は笑い始めた。 「あーあー、順調に行ってたはずだったのになぁ…漫画とかドラマみたいに行くわけないか、だってあれって誰かが想像して描いたフィクションだもんね。現実で上手くいくわけないかぁ……ショ〜〜〜ック!!」 「やっぱり貴方が春野さんを殺したのね?」 「そうよ?だってもう芸能界の仕事やりたくないとか言い出すんだもん。こっちは一生懸命手ぇかけてあげたってのにさ、恩を仇で返されちゃたまったもんじゃないっての。たかが金稼ぎのマネキンの分際で偉そうにさ」 「貴方どうかしてるわ。まるで人の心が無いみたい」 「……ふふっ。…人の心が無い…ね。そうね、そんなものあったらこんなの振り下ろしたりなんてしないわね」 植原は自分の鞄からナイフを取り出すと財前を見て にっこり微笑んだ。
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