振り向いた記憶

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              「そう言って笑っていた彼女は本当は泣いていたのかもしれない。あの時の俺に彼女の手を掴んで誰も自分達の事を知らない遠い場所に攫うだけの勇気があったらこんな事にならなかったかもしれないと思うと何であの時これで良かったんだと自分から彼女を離してやる事が彼女への愛だと思ってしまったのか、今はただ後悔しか出来ないでいる自分を自分で殺してやりたくてたまらない」 『愛してるって言って私を抱きしめて良いのよ?』スクリーンに写るヒロインの女性が笑みを浮かべて主人公の男性を後ろからやんわり抱きしめた。 「加奈子は俺とゆう子だ」 「やっぱそうだったんだ」映画を見てポップコーンを食べながら禄助は納得した。 「会わないと別れる少し前に ゆう子から妊娠してる事を聞かされた。最初俺は禎通さんとの子じゃないのかと言ったが ゆう子は違うと否定した。てっきりもう禎通さんと一緒に過ごした事があると思っていたがお互い仕事が忙しくて結婚してから一度も一緒に同じベッドで寝た事がなかったんだと。だから俺が初めての人だと ゆう子は はっきり言った」 「それじゃ、赤ちゃんが出来たって禎通さんに知られた時ゆう子さん凄く色々言われたんじゃないの?怒鳴られたりとか」 「いや、ちょうどその頃そろそろ子供はどうかって話しになって禎通と過ごした事が何度かあったそうだから赤ん坊が出来ても疑われずにすんだんだ」 「すげぇじゃん、奇跡(ミラクル)ってマジであるんだ」 「本当にびっくりよね。私もそれ聞いた時 驚いちゃった。まるでドラマみたいねって」花凛も頷いた。
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