硝子の靴

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「春野さんがバイトしていたドラッグストアに青野芳佳さんがパートとして働いていたそうです」 後部座席に座っている萩野に車を運転しながら梨木は話し続けた。 「芳佳さんはアルコールの摂り過ぎのせいもあってか、酒が飲めない昼間などは 常にイライラしていて、若いバイトの子には当たりが強く ちょっとでもミスをすれば『ただでさえ忙しいんだから足引っ張んないでよ!』と周りに客が居ても大声で怒鳴りつけたり、夏場 クーラーの効いた場所で昼休憩している子を見かけては『バイトは良いわねぇ、外仕事無くって!私なんていっつも外に商品出したりとかして暑くて大変なのにさ!』など嫌味を言ったりしたりしてたそうです。そのため周りからの評判はあまり良くはなかったそうで、他の従業員の方達を含めてバイトの若い子達からもかなり嫌われていたとか…」 萩野は黙って聞いていた。 「芳佳さんの態度があまりに悪いため当時店長をされていた前田さんと言う方が何度か注意してはいたみたいなのですが あまり効果はなく、それどころか芳佳さんは余計にストレスが増え続け 酒を飲む量が増え、そのうち仕事中も隠れて酒を飲んだりするようになり 結局青野さんは強制的に働き先をクビにされ家で酒浸りの日々を送るようになったらしいです」 「アルコール依存症はその頃からか」 「そうみたいですね。家族も何度も辞めさせようとしたらしいんですが全然駄目で…。パートで働いていた時はとくにモデルの仕事と掛け持ちでバイトしてた春野さんへのイビリは他の人よりも強かったそうですよ、春野さんもその事で何度も店長に相談していたらしいですし」 車を停めると二人は車から出て とある場所に向かって歩き出した。 「春野さんの親御さんから聞いたが春野さんは芸能界を辞めたがっていたらしいな?」 「えぇ、何でも性に合わなかったとか何とか…。あまり目立つ事が好きではない子だったそうなんでそれも理由のひとつではあるんでしょうけど本当の理由はマネージャーからのパワハラが原因でしょうね。きっともう大丈夫だと思い込んで事務所に引き入れた自分も悪かったんだとPQ事務所の社長が嘆いてました」 二人はレンタルウエディングの店に入った。 「警察です。こちらに今日植原莉嘉さんと言う方が来てますよね?今どちらに?」警察手帳を見せて萩野が受け付けの女性に尋ねた。
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