怪しい奥様

6/9
前へ
/131ページ
次へ
膝丈の生垣を跨いで来たイケメンは二人のもう一人の幼なじみで親友・天野(あまの)(すばる)だ。昴は草木の間をガサガサ抜けてやって来た。知らない人が目撃していたらただの不法侵入者にしか見えない。こいつは野良猫か?と二人は思った。 「どうもお疲れ様です」 「涼しい顔で言ってんじゃないよ!びっくりしただろうが!」 ズボンに付いた葉っぱを手で ぱっぱっ と払っている昴に向かって禄助が立ち上がって怒鳴りつけた。 「まぁまぁ…」李兎は禄助の腕を引っ張って宥めて言って「加奈子さんと知り合いなのかね?」と昴に尋ねた。 「いえ全然」 「どうせ“中”の話しだろ…、なぁフランケンシュタイン博士?」 「中?」李兎が首を傾げると「うっふふふふ…」と昴は静かに気味悪い笑みを浮かべた。 「おい、何だね?さっきからお前達は何の話しをしているんだ?」 「骸骨の話しだよ」 「は?」 …はぁ と禄助は深いため息をついた。 「お前何年 (こいつ)と友達やってんだよ?良い加減察しろ、こいつがにやにやし出す時って言ったら死体を見つけた時でしょうが」 昴は自宅が警察繋がりの病院と言うのもあって昔から血だらけの遺体や誰だか分からない死体だの骸骨だのを見るとやけに興奮し始める変わった性格をしているのだ。まぁ普段は誠実で真面目な優等生のフリをしているから禄助達のように付き合いの深い者しか彼の本性は知られていないのだが…。 「いやね、知り合いからドーナッツの無料引き換え券を頂いたのでドーナッツ屋に行こうと自室で支度していたんです。そしたら谷口さんのご遺体写真を持った私の父が楽しそうに私の部屋に入って来て『見てくださいよ、(すばる)君!』と写真を見せてくるものですから二人で盛り上がってしまいまして。そうしたら何とそのお嬢さん、禄助君達が今日向かわれた葬式の主役だと言うじゃないですか!もう私居ても立っても居られなくなりまして…うっふふふふふふふ…」 相変わらず変な親子…。禄助と李兎は思ってちょっとゾッとした。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加