硝子の靴

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試着室の中はもうしっちゃかめっちゃかだった。 ナイフを振り回して追いかけてくる植原から逃げ回っていた財前の息はすっかり上がっていた。 「…っ、はぁ、はぁ……私を殺したって貴方はもう逃げられないのよ!」 「煩いっ 黙れっ!私はね、偉そうに上から言ってくる奴が一番大っ嫌いなんだよっ!!どうせ最後はこんな事になるなら事務所を辞める前に社長や白鳥も片付けといてやれば良かったわ!」 ニタァ と笑うと植原はついにナイフを振り上げて財前に飛びかかった。 やばいっ!このままじゃ本当に殺される!! ギリギリのところで何とか避けたものの勢い余って財前は足を滑らせて倒れそうになった。 「きゃっ…!!」 その時だった、財前は誰かにガシッと抱き止められた。 「怪我はないか?」 前に植原と話しをしていた警察官だった。しかしよく見ると誰かに似てる気もしなくない。 ん? と財前が黙ったまま萩野を見上げていると「お前聞いてんのか?」と萩野は顔を顰めた。 「警察です!植原莉嘉さん、貴方を殺人罪及び殺人未遂容疑で逮捕します!そこを動くなよ!」梨木が拳銃を向けた。 「警察だとっ!?」 「春野さんの側に落ちていたパールからお前の指紋が検出された。それからとあるバーにお前が落としていったパールにはお前の指紋と一緒に血がついていて、鑑識の検査の結果それは春野さんの血液だった事も判明した。青野芳佳さんとの関係についてもお前に尋ねたい事は山ほどある。署までご同行お願いします」 萩野に言われた植原は悔しそうに舌打ちすると床にナイフを捨てて両手を上げた。
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