怪しい老人

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怪しい老人

 ここ最近は地球温暖化の影響もあってか雪なんてあんまり降らなくなっていたのに今年は膝まで埋もれるほど雪が積もった。 「寒っむ…」 昨晩から降り続いている雪空を禄助が目を細めて見上げていると少し離れた場所から「もう何なのよ!」と声が聞こえてきた。 ゆっくり声のした方を振り向くと隣の席の高飛車で全然可愛げのない女 財前が雪の上にべしゃっと転んでいた。 「ダッセ」 「!?」 禄助の馬鹿にしてくるような声に気付いて顔を上げた瞬間 「う、ううう、煩いわね!」と財前は顔を真っ赤にして怒り返した。 「お前仕事は?」 何だか昼間も同じ事を誰かに聞かれた気がするが「オフよ」と財前は言って お尻についた雪を手で払いながら立ち上がった。 「携帯」 「は?」 「落としてるぞ」 指差して言われてそれに気付いて「ありがと…」と財前は返して拾った。
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