怪しい老人

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「どこか店でも探してるのかしら?」財前は言った。 頭には深く被ったニット帽、少し傷んでるように見えなくない小豆色の“どんぶく”には薄っすら雪が積もっている。どうやら結構長い時間 外を歩いていたように禄助の目には映った。 何か・何処か・それとも誰か を、探してる…? 気になって立ち止まって見ていると 紙切れを見ながら歩いていた老人がすれ違い様に若い男性とぶつかってひっ転んだ。 「あっ、大変!大丈夫ですか!?」 思わず財前が走って駆け寄って行った。 きっとあの爺さんはここらの人じゃない。だいたい ここだって県の中では都会と言われていてもだいぶ田舎。だけどだからってこの町で どんぶく なんて着て歩いてる年寄りは見た事がない。あんなの着て外を歩いてる人はまだ自分が“本当の田舎”に住んでた幼稚園の時だけ…。 この時 何故かは分からないが禄助は目の前の老人を見て何だか非常に嫌な予感を感じ取っていた。 「萩野君っ、ちょっと来て!お爺さん足捻っちゃったって!」 財前に呼ばれて禄助は仕方なく走ってその怪しい老人の元へ向かって行った。
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