ドーナッツ

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ドーナッツ

 「……うん、なかなか美味いドーナッツじゃないか。なかなか自分では買わないからなかなか何ともうんたらかんたら……」 いつもの事だが一人語りが長い…。 李兎の家の茶の間で玉露茶の入った招き猫柄の湯呑みに口を付けて啜った瞬間 あまりの熱さに「熱っちゃ〜っ!!」と禄助は唇を手で叩いた。 「淹れたてだから気をつけたまえと今さっき言ったぞ」 「うっわ、今絶対 口の中 火傷したわ…最悪…」 「人様の家で淹れてもらった茶を飲んでそんな事言うんじゃない」 「つうかお前ん家いつから玉露になったんだよ?」 「昴から熱海の土産品で貰ったんだ」 「えぇ?俺よく分かんねぇ勾玉よこされたのに?」 「家族で日帰りで行ってきたそうだよ」ふふっ と李兎は微笑んだ。 「ところで、なに?キスだって?」 「あぁ、笠原の後輩の金井と樋口先生が美術室でぶちゅってしてたんだってよ。財前と笠原が見ちまったって」 「おやまぁ、お盛んな…。先生も若いな」 「つっこむとこそこかよ」 ふーふー と湯呑みの中を冷ましてようやく禄助は玉露茶を飲んだ。「気持ち悪ぃよ」 「そうかね?」 「自分の親と同じ年齢の良いオッさんと俺らよりも歳下のガキんちょだぜ?普通に引くわー」 「頼むから他所で言わないでくれよ?歳の差恋愛に好意的な人達から一斉に叩かれるから…。袋叩きにあってる親友は見たくはないよ」笑って言って李兎も玉露を飲むと「やはり高いだけあって美味いな」と頷いた。
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