ドーナッツ

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「それに“恋に歳の差は関係ないわ”と かの有名なマリリン・モンローも言っていた」 「どうだか。せめて四捨五入して歳が同じ範囲ならまだ有りな方だとは思うけどね。三毛猫ホームズに出てきた通りすがりのトラック運転手のオッさんが言ってた」 「お前…活字読めたんだな?」 「読めるわい!高三だぞ!?」眉をつり上げて禄助はダンッとテーブルを拳で叩いた。 「冗談だ。……あぁ、そうそう。金井さんの話しは一旦置いとくとして……」 李兎は三つ目のドーナッツを手に取った。食が細そうなスマートな体型に反して意外と結構な大食いなのだ。この前 回転寿司屋で六皿で腹が苦しいと箸を置いて唸っていた禄助の目の前でぺろりと七十皿平気で平らげたあげくデザートにバナナパフェと黒蜜わらび餅まで食べていた。 「俺の母さんから聞いた話しなのだがね、昔 母さんが携わっていた教育関係の仕事で坂城さんと言う教師志望の若い男性が他の教育実習生の方々と一緒に、うちの母さんが建てた新しい小学校の校舎を見学しに来た事があったそうだ」 「ふ〜ん」頷きながら聞いて禄助はチョコドーナッツに手を伸ばした。 「お前の母ちゃんよく覚えてたな」 「その日来た中で一番顔が良かったから覚えてたそうだ。うちの母さんは面食いなもんでね。だから父さんの事も顔で選ん……」 「お前ん家の話しはしなくて良いわ。昔から何度も聞かされてるから知ってる。耳にタコが出来るくらいな」 「タコなんて出来てないじゃないか」 「うっせぇ」李兎を睨み見ながら禄助はドーナッツにがぶっとかぶりついた。
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