ドーナッツ

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 翌日午前十一時二十七分。でこぼこ道で険しい山道を一台の小さな紺色のミラジーノが激しく機体を揺らしながら登っていた。 「このウッド調のパーツが気に入ってるんだ」と笑顔で車を運転していたのは李兎だ。 「お前免許持ってたんだな」 「聞いてませんよ?どうせ取りに行くなら仲良く三人で行きたかったです、しくしく…」 そんな事言ってる前に高校生が車を運転してるのが警察免許を持ってる誰かにバレる方が問題のような気がすると どっちか一人くらい気付いたら良いものを…。 助手席に乗って身体を上下左右に激しく揺らしていた禄助が手に持っていたポテトチップスはもう車内にばら撒かれていたし、後部座席で携帯タブレットで道を確認していた昴は頭をぶつけて額にタンコブができていた。二人は李兎の運転する車に乗るのは今日が初めてだ。 「あぁ、ようやく“昨日”テストに受かって取得したんだ」 二人の顔がみるみるうちに青冷めた。「「初心者ーーーーーーっ!!!」」 「なぁに大丈夫、心配する事はない。昨夜父さんと家の周りを運転してちょっと練習して来たからな!あっはっはっはっはっ!」 「昴、死ぬ時は一緒だぞ!?」 「えぇ、えぇ、この手は一生離しません!!」 がっちり 二人はお互いの両手を泣きながら強く握り合った。
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