ドーナッツ

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 二人はもう一生分の恐怖を味わったんじゃないかと言うくらい走行中は抱き合って泣きまくった。ようやく山道を抜け町中に出て車が目的地付近のパーキングに停まった時に瞼が真っ赤に腫れ上がっていたのがその証拠だ。 「坂城さんの自宅アパートは美術大の近くだったな?どれ参るとするかね」 らんらら〜ん♪ 陽気に歩いている運転手が二人にはMr.サタンに見えていた。もちろんドラゴンボールのビーデルの父親の事ではない。地獄で切れ味抜群のデカい銀色の笏を持って怖い顔して毎日悪人を容赦なく裁いてる方だ。 「人が山のようだ!」 混雑している場所で大声で李兎が 人がゴミのようだ!と言わなくて良かったと二人は思った。 「若者が多いな」 「お前だって若者だよ」 「ここら辺 大学が多いですからね。駅のすぐ側にあるアパートのほとんどが大学寮らしいですよ。あっ、ほらビルの間から見えてるあの建物、医学大ですよ。あっちは美術大…それにほらあっちは…」 「あっちあっち説明はもう良いよ。日ぃ暮れちまうからさっさと坂城ん家行くぞ!」 「昴、まずこの十字路はどちらに向かって歩けば良いのだね?」 「待って下さいね、ええっと…」昴はタブレットを見ると「右です」と指差した。
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