ドーナッツ

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案内係の昴の後ろを二人は「冬なのに暑いな、禄助」だの「なに言ってんだ李兎、寒いだろ馬鹿」など言い合いながらついてった。昴の方は後方の喧嘩声など聞いちゃいない。 「あっ、このコンビニを曲がった先にある茶色のアパートです」 「あれか!」と禄助が指差した。 「えぇ、はい、多分あれです」 「多分と言うのがちと心配だな…」と李兎が呟いた。              「坂城さんなら二階だよ。一番奥の部屋」 あつ森で例えるならその帽子は紫のクマ耳アニマルハット。それを被ったこのアパートの住民に教えられギシギシ危ない音がなる階段をのぼっていくと「あら、こんにちは〜!じゃあ行って来ま〜す!」とがっつり全身豹柄の服装をした派手な初対面の女性に三人は笑顔で手を振られた。 「い、行ってらっしゃ〜い…」 階段を軽快な足取りで降りて行く女性に三人は手を振り返した。 「な、何だか変わった人達が住んでますね、このアパート…」 「変わった人って お前が他人に向かってそれを言う日が来るとはね」 「禄助君 最近 私に対して酷くないですか?」 しくしく と昴は泣くフリをした。
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