ドーナッツ

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三人はぞろぞろ揃って二階の一番奥まで歩いて行くと さっそくインターホンをひとつ押してみた。しかし反応がない。 「留守か?」インターホンを押した李兎が二人の方を振り向いた。 「まぁ昼間だしな」 「あっ、待ってください。足音が聞こえますけど」 「「えっ?」」二人が玄関ドアの方を見ていると 確かにパタパタと小さな足音が近付いてくる音がした。 「お前昔から耳良いよな」 「それで目も良ければ完璧なのだけどね」 「うっふふふふ……」静かに笑って、昴はモスグリーンの縁の眼鏡を小指でくいっとかけ直した。 ガチャガチャと鍵を開ける音がして「おかえりなさい!」と元気よくドアが開いて 小さな男の子が笑顔で顔を出した。 しかし大きなまん丸の目は三人の見知らぬ男子高校生ズの顔を見るなり 間違えた! と思ったらしく 慌ててドアを閉めようとした。 「あっ、待ちな!」と しまりかけたドアの間に禄助が無理矢理ガッと左足を挟んだ。 「あんたの父ちゃんに用があんだよ。騒いだりすんじゃねぇぞ小僧」 小さい子の視線から見上げたら顔に黒い影がかかって恐ろしく見えても仕方ない。今にも泣き出しそうな顔で男の子が震えてるのが証拠だ。 ニタッとした不適な笑顔でちびっ子を見下ろしてる禄助を見て 側に居た李兎と昴でさえ お前はヤクザか? と ちょっと怖くなった。禄助は小さい子を怖がらせまいと頑張って苦手な笑顔を作っただけなのだが。
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