ぼくだけが知ってる話し

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「…よぉ、久しぶり」 「なんだい、随分機嫌悪いね?朋香がまた何かしたみたいだね」 「また って何よ?私“今日は”何にもしてないわよ!」 「あら そうなの?」ふふっ と川島は小さく笑った。「朋香、ちょっと寒いから何かあったかい飲み物を淹れてきてもらえるかい?」 「良いよ。あんたの好きなココア淹れてきてあげる、萩野君の分もね」 「俺はお茶…」と萩野が言った時には朋香はもう奥部屋にある台所に行ってしまっていた。それを見て川島はまたおかしそうに笑った。 「夕実ちゃん元気?」 「あぁ、変わらず走り回ってるよ。今日もどこだかのショッピングモールで冬服のバーゲンがあるとかで朝っぱらから婆さんと二人で鼻息荒く走って家を出てったよ」 『バーゲン!バーゲン!』口に出して言いながら鉄砲玉のように家を飛び出してった妻と母親の元気な姿を思い出しながら言って萩野は短くため息ついた。 川島はさらに大笑いした。「昔から変わらないな、夕実ちゃん達」 「お前んとこもだろ」 「熱ちぃっ!」と声が聞こえてきた台所の方を向いて萩野は言うと「お前が帰って来る前に橘から聞いたんだが…何故お前が谷口さんとこの話しを知ってる?」 「さてね、なんでだろうね」 川島は ふっ と笑うと上着を脱いで近くの棚の上にポンと置いた。
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