ぼくだけが知ってる話し

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「あっ、それともうひとつ。昔刑事だった時に少し関わった事があったって言うので この前うちの店に鈴原(すずはら)さんが来たんだけど、鈴原さん達の事覚えてる?」 「あぁ、オレオレ詐欺に引っかかったって相談しに来た事があったな」 「そうそう、その老夫婦」 「その二人が今度は何に巻き込まれたって?」 「あはは、巻き込まれてはいないよ。ただ、ちょっとあれってもしや… って言うような何かのサスペンスドラマのワンシーンみたいなの見かけたから話しに来ただけ」 「どんな話しだ?」 「崖の下の方で何人かが束になって一生懸命穴掘った土の中に何か埋めかたしてたのを見たそうだよ」 「何だって?詳しく話せ」 「うん。鈴原さん達ツアーで山菜採りに参加したんだって。そんで ちょうどそろそろ皆で山を下りましょうかってなって山を下り始めた時タイミングよく大雨が降ってきたもんだからね、現場がよく見えなかったんだって。だから崖の下にどんな人が何人居たのかまではよく分からなかったけど、レインコートみたいなの着た何人かが鈴原さん達が居た場所のずいぶん下の方でスコップ使って何かやってたんだって。最初何か工事でもしてるのかなって思ったらしいんだけど、ツアーガイドの人に後で聞いたら『今日は山の工事はなかったはずですよ』って言われたんだって」 「孝成、それを相談されたのはいつだ?」 「焼肉食べ放題奢ってくれんなら教えたげる」 「お前なぁ…子供じゃないんだから……。…はぁ、分かった。今度奢ってやるから教えてくれ」 「春だよ」川島はにこっと答えた。
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