雪に残る足跡

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「そろそろ閉店時間ですからそちらの空になってるグラスを片付けさせていただきたいのと……出来たらお話しはまた別の場所でしていただけたら嬉しいのですがね」 店を閉めるからさっさと帰ってくれ と言ってるのだ。 二人は あ! と はっ として「すみません」と謝ると申し訳なさそうな顔して手に持っていたグラスをマスターに渡した。 「…とにかく、私だけのせいにしないで」 植原は相手の男、恋人の伊藤(いとう)に強く言うとソファーに投げてあった鞄を持ってさっさと外に出て行った。 「いやはや女性の相手は大変ですな」マスターが ふふっ と笑った。 「喧嘩ですかな?」 「は、はぁ…ちょっと色々ありまして…」 「もし宜しければ私がお話し聞きましょうか?とは言っても閉店時間がもうそこまで迫ってますから三分二十一秒しか聞いてやれないのですけどね」 腕時計を見て言うマスターに「いえ、大丈夫です。騒がしくしてしまいすみませんでした」と伊藤は謝った。 それから「代金です。お酒、とても美味しかったです」とマスターにお金を渡すと小走りで植原の後を追いかけて行った。 「若いですなぁ……おや?」 マスターは床にパールが二〜三個ころころ落ちているのに気付いた。よく見るとパールには透明なタスクのような物が通っていてそれは何故だか千切れている。 さっきの女性の忘れ物だろうか…? しゃがんでそれを指で拾ってじっくり見るとパールには赤い何かが飛び散った跡が点々とくっ付いていた。 
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