雪に残る足跡

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彼女の連絡先を消去しながらそんな風に考えていると「おやまぁ、誰かと思えば昴君。眼鏡してないから一瞬分かんなかった」 通りがかりのチャコールグレーのコートを羽織った梨木が白い息を吐きながら声をかけてきた。 「それとも“ごめ〜ん、お待たせて〜!”って駆け寄って来た方が良かった?」 「仕事帰りですか?」 茶化してきた梨木を完全無視して昴は聞いた。ちなみに梨木とは禄助繋がりで李兎と一緒に昔から知り合いだ。一人っ子である三人にとってはお兄さん的存在。 「まぁね。…あれあれ?いつもの二人(禄助と李兎の事)が見えないけど。まさかキミ一人?珍っずらし〜」 「いつも一緒にいるわけではないので」 「へぇ。トリオって仲間が不在だと寂しく見えるね。あとさ今日眼鏡どうしたの?かけてないと誰だか分かんないよ」 「今まで私の事 眼鏡だけで昴君だと判別してたんですか?」昴は軽く梨木を睨んだ。 「だって人の顔覚えんの苦手なんだもん」 「…刑事のくせに」ぼそっと昴は呟いた。 それから梨木が右手薬指にシルバーの指輪を着けてるのに気付いて昴はびっくりして大きく目を開いた。 「梨木さんいつご結婚されたんです?」 「結婚してないよ」 「えっ、でも薬指に指輪されてますよね」 「あぁコレ?女の子避け指輪」梨木はにこっと笑って指輪を見せた。
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