雪に残る足跡

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「娘が産まれたそうなんです」 「ほぉ、娘さん!それはおめでたいですね!拍手しなくては、おめでとうございます!」 パチパチパチパチと清達は揃って手を叩いた。 「こちらの病院で」 「おやまぁ、うちの病院で!それはさらにおめでた…………ええ?うちの病院でご出産されたんですか?将吾さんの報告書(頭の中にしまってある書類の事)には記載されてないですけど?本当にこちらの病院です?」 「えぇ。息子が電話で確かに私に天野総合病院って言ってましたから」 「失礼ですが、聞き間違いじゃないですか?」梨木が聞いた。 「た、多分…」あんまり聞き返されるもんだから前田はちょっと自信が無くなってきて不安そうに頷き返した。 「遠くに住んでるしこんな歳なんでなかなかこっちまで来れなくて電話でしか聞いてないので…」 「電話でしか と言う事はお孫さんにお会いは?」今度は昴が聞いた。 「してないです」 「でも息子さんの奥さんには会った事はあるんでしょう?」 「ありません。奥さんが出来て子供も産まれた事も全部電話でしか聞いた事がありません」 妙だな…。前田以外の三人は一瞬 顔を見合わせた。
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