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「それに私よりほんの少しだけ多く育子の方が坂城を愛してたから。私は親友の育子の事が友達として大好き。それもあったから育子が坂城を好きになったのを知って身を引く事にした。育子と喧嘩したくなかったし…だけど……」
「坂城さんの事も完璧に忘れる事は出来なかったのだな?」
優しく李兎が聞くと和田は静かに頷いた。
「こんな事駄目だって頭で分かってても気持ちは理知的な冷静な感情にはついてけなかった。本能が彼を求めて離さなくて はっ と我に返った時にはいつも隣で彼が眠っていた。朝目が覚めると罪悪感から涙が止まらなくなって身体を洗いに行くフリして風呂場で声を殺して一人で泣いた。彼が育子と大喧嘩して家を出るたびいつもその繰り返し。いつかやめなきゃって思ってたのに、終いには結局 育子にバレて私は育子と大喧嘩した。…
『ミミちゃんの嘘吐き!!裏切り者!!大っ嫌い!!』
『わっ、私だって、あんたなんか最初っから大っ嫌いだったよ!!』
『デブ!!ブス!!』
『もやし!!こけし顔女!!』
……気付いたら畳の上で掴み合いになってて、叩いたり髪引っ張りあったり まるで小さな子供の喧嘩みたいになって、散々言い合って しばらくして二人ボロボロになった後 育子は上着も持たずに私ん家を飛び出してった。育子が亡くなったのを知ったのは次の日だった。直接私が自分の手で殺したわけじゃないけど、自殺だったらしいから私が殺したも同然だわ」
「坂城さんはその事について何か仰ってました?」萩野が聞くと「何も」と和田は首を横に振った。
「私と不倫してた事も無かったかのように育子が亡くなってからは一切会わなくなって、残された那緒君と父子・二人一緒に手を取り合って懸命に生きてる良い父親気取りしてるわ」
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