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「あの…春野さんが芸能界を引退したって聞いたんですけど……どうして急に？春野さん、最近知名度上がってきたからCMの話しも来たらしいって聞いてたんですが…」
「普通の生活に戻りたいんですって。きっと疲れちゃったのね、ほら芸能界って不思議な世界だから」
嘘だ。財前は白鳥の話しを信じなかった。
ついこの前 春野のマネージャーの植原が警察に彼女が居なくなってしまった事を相談していたばかりなのだ。それなのに突然の植原の退社に春野の引退、あまりにも突然な事が重なりすぎていて不自然な所ばかり、怪しすぎるにも程がある。
「本当にただ引退しただけなんですか？」
「え？」
「それに植原さんが事務所を辞める事も、本当に普通の事なんですか？」
「何が言いたいの？」
「白鳥さん達は何か知ってるんじゃないですか？」
「……ねぇ、鞠奈。申し訳ないんだけど私には貴方が何の話しをしてるのか本当にさっぱり分からないわ。どうしてそんなに二人が事務所を辞めてった事を気にしてるの？誰かが急に事務所を去って行く事なんて今までもいくらでもあったじゃない？小さい時からこの事務所でモデルをしてた貴方なら尚更そう言う場面をたくさん見た事あるでしょ？それが何で今回に限ってそんなに不思議そうにしてるのよ？二人に何かあったの？」
どうやら本当に白鳥は何も知らないみたいだった。
その事に気付いて財前は「何でもありません、失礼しました」と頭を下げると足早に事務所を出て行った。
どうして…どうして急に二人は……。バス停まで歩いて行く財前の歩くスピードは考え事をしてるためかいつもより少し速かった。「何でよ……何が起こってるの？…」
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