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「どうしたの?」
「きっとカッとなったあまり口が滑ったのね。樋口先生が突然『だから俺が殺したんじゃないって言ってるだろ!』って言ったの」
「えっ」財前は目を丸くした。
「さすがに気になって私は足を止めて二人の話しを盗み聞きした」
「私と同じ事しててよくさっき人の事あーだこーだ言えたわね」
「煩いわよ」
「で?その話し、どんな話しだったの?」
「仕事帰りに樋口先生がいつも使ってる帰り道の商店街の方が混んでたからたまには違う道使って帰ろうと思って 普段はあんまり通らない橋を使って歩いて帰ったんだって。そしたらね あんまり綺麗な満月だったから立ち止まって眺めてて ふと下を見たら誰かは分からないけど女の子がぐったりした様子で頭から血を流して倒れてたんだって」
「警察には連絡したのかしら?」
「金井さんが同じ事聞いてた。そしたら怖くなって電話もしないで慌ててその場から逃げちゃったんですって。おかげで後から警察が樋口先生のとこに事情聴取しに来たらしいんだけど、まぁ偶然通りがかっただけだったわけだし、何ともならずにすんだみたい」
「女の子の方は無事だったの?」
「さぁね。そこまでは分からない」
「どんな女の子だったかとか聞いてないの?」
「あの人達と一緒に話ししてたわけじゃないから聞けるわけないでしょ。でも先生が“女の子”って言ってたから大人ではないのは確かよね。もし大人だったら“女性”って言うだろうし。……ねぇ早くロールケーキ食べないとパサパサになるわよ?」
「ダイエット中なの。食べて良いわよ」
「どこダイエットする必要あんのよ?」
腹立たしく思いながら華奢な身体の財前を舐め回すように見て笠原はロールケーキにフォークを刺すと 大きく口を開けて ばくり と食べた。
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