キミだけ

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キミだけ

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪ 学校のチャイムが鳴った。今日は終業式で明日からは待ちに待った冬休みが始まろうとしている。そのせいか生徒達は普段よりも何だかちょっと笑顔が晴れやかな子が多く冬休みに何処に行くかなどの話題で朝から盛り上がっていた。 「こらぁ、お前ら!予鈴聞こえなかったのか?明日から冬休みだからって浮かれてっと怪我すっからな?」 担任の猪股(いのまた)が教室に入って来たのを見て皆は慌てて自分の席に戻って行った。 「よーし、皆揃って…ないな。萩野は最後の最後まで遅刻か?財前、何か知らないか?」 「知りません」 隣の席と言うだけで禄助が不在だと財前は先生からいつもこう聞かれるのだ。 もしかして猪股先生、まだ私達が仲良しだと思ってんじゃないでしょうね? 何度違うと言っても同じ質問を毎朝されるので さすがに疑いたくもなってくる。財前は短くため息ついた。 「まぁ萩野の事だ、そのうち来るだろ。そんじゃ今日の日程についてだが、今日は終業式だから午前授業と話しはして……」 猪股が話し始めたタイミングで教室の前のドアがガラガラッと開いた。 「おはざいまーす」と眠そうな顔して堂々と前から入って来たのは禄助だった。
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