怪しい奥様

3/9
前へ
/131ページ
次へ
加奈子は勝手に自殺した。 誰にも“答えず”死んだのだ。 加奈子の部屋の勉強机に置かれてあったメッセージカードにはただ一言 今まで育ててくれてありがとう とだけ残されてあった。それを見た加奈子の両親がどんな気持ちになった事か。二人には嫌味にしか聞こえなかった。 「李兎が文句言いたくなる気持ち分からなくねぇよ。“誰も文句を言わない”んだもん。俺がもし加奈子の親だったら ふざけんじゃねぇぞ! って怒鳴り散らしてる。だってズルいじゃん…死ぬなんて。もし誰かに相談したてたら、誰でも良いから誰かに一言でも言ってたら 何か変わってたかもしれねぇのに……もう一人だって勝手に決めつけて勝手に諦められたら…腹立つよ」 二人は葬式会場を出ると外に置いてあったベンチに腰掛けた。 「死んじまった奴に今更何言ったって仕方ないって思ったから言わなかったのかもしんねぇけど…」 「…死ぬ事を選んだ理由は結局それを選んだ本人にしか分からない」 「…うん、だからズルいんだよ。お前だってそう思ったから よく言えたものだな って言ったんだろ?」 「あぁ」李兎は頷き返した。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加