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「あれは彼女ないよ。熊だよ」
「うん?熊?」前田はきょとんとした。
「この場に財前さんが居なくて良かったな」李兎は隣の昴にこそっと言った。
「えぇ、もし居らっしゃったら禄助VS財前さんによる動物大戦争になってましたよ」昴は頷き返した。
そして ワンワン!ガオガオ! 牙剥き出しに激しい喧嘩を繰り広げる二人の様子を想像して二人はゾッとした。
「昴から…そこの眼鏡かけてる奴から聞いたんだけど息子さん探してんだってね」
「あぁ、まぁね。だけど無駄足だったようでね、どうやら息子はもうこの街には居ないみたいなんだよ。いったい何処に行ってしまったんだか…」
「お孫さん、“かなこ”さん だっけ?本当に会わせてもらった事ないの?」
「ないよ。一度もね」
「写真くらいはハガキとか手紙とか、何かそんな感じのやつで送られてきたりしなかったの?」
「何も」
「携帯には?」
「私は携帯は持ってないんだ」
「珍っずらしぃ〜!今時携帯持ってないとかヤバくね?」
「あはは、よく言われるよ」前田は笑った。
「息子に孫の顔写真くらい見せて欲しいといくら頼んでも頑なにそれは出来ないと言われてね。……本当は本当に将吾が結婚したのかさえ分からなくて……全く困ったもんだよ」
前田は深く溜め息ついた。
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