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「だが本人から結婚したと言われたのだろ?」李兎が聞き返した。
前田は微妙な顔して頷くと俯いた。
「でも息子は…将吾は父親である私に奥さんの名前すら教えようとはしなかった。もしかしたら結婚したわけじゃなく、ただ子供が出来ただけなのかもしれない。…本当のところは何もさっぱり分からない……だから困っているし正直ずっと将吾の事が心配で仕方がない……。色んな事を隠して生きている、あの電話を最後に連絡が途切れてしまってからというもの まさか何か事件に巻き込まれているんじゃないかと毎日不安で不安で…」
「一人息子さんですしね。心配にもなりますよね」それまで黙って四人の話しを窓の辺りに立って聞いていた清が頷いた。
「前田さん、あんたの奥さんは?」
「妻は将吾を産んですぐに病気で他界したよ。元々身体が弱くてね、私と結婚を決めたあたりから医者からはそんなに長くはないと言われていたんだ」
「覚悟の上で結婚されたなんて、前田さんは強い方なのだな」
「いや、私は強くはないよ。気持ちが強いのは妻の方だ。結婚だって彼女からプロポーズされたんだ。男として情けない話しだよね」前田は笑った。
「そんな事ありませんよ」と昴が微笑んだ。「私の父さんもそうでしたから。ね、父さん?」
清は「うっふふふふ……」と笑い返しただけだった。
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