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足音
『坂城さんの後をつけ回していたのは春野さんと言う方でした』
『春野さん?』
『モデルの仕事をしている方です』
萩野が言うと『さっぱり知らない子だ…』と坂城は職場近くの花壇のレンガに腰を下ろした。
『どうしてその子が僕を?傘を貸しただけが理由だなんて…そんな事くらいで……』
『“そんな事くらい”が彼女にとってはとても嬉しかったんでしょうね』
『どう言う事ですか?』
『彼女はその頃 普通の生活に戻りたいと悩んでいたそうですから。でも誰にも言えなかった、知っていたのは春野さんと一番仕事する回数が多かった月岡さんと言うモデルの女の子、ただ一人だけでした』
“もう疲れたって、桃佳ちゃん最近そればっかり言ってました。知名度も上がってきて仕事が増えてきたせいだとは思うんですけど…”
月岡から話しを聞いた時の事を思い出しながら萩野が伝えると『そうですか…』と坂城は小さくはにかんだ。
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