第四話

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 その後、僕らは同じ通学路を歩く他の生徒達から大変な注目を浴びてしまった。  まぁ、そりゃそうだろう。  これから当然の如く学校一の人気者へと駆け上がっていくだろう彼女と、冴えない陰キャボッチな僕とが肩を並べて歩く光景はあまりにも不自然だ。  集まる視線が痛く突き刺さる。  何であんな奴が?と言ったような疑問と妬みが絡んだような視線だ。  ちなみに、僕と彼女が住むアパート周辺には同じ学校の生徒はいなかったらしく、幸いな事に僕らが同じアパートから出てくる瞬間は、誰にも目撃されずに済んだ。  ◆◇◆  学校では昨日と同様、佐々木結衣の周りには生徒の波が押し寄せ、当然、そこに僕が立ち入る隙は微塵もない。  心なしか佐々木結衣の表情が引き攣っているようにも見えなくもないが、  やはりああやって常に大勢の人に囲まれるのは疲れるのだろう。 (人気者も大変だな……)  そんな彼女が人集りから解放されるのは唯一授業中のみ。    チラッと視線を隣りへ向ければ真面目な表情で黒板の文字をノートへ写す佐々木結衣の横顔がある。  その横顔は只々美しく、可愛いらしく、そして色っぽい。  僕は彼女に気付かれぬよう度々その横顔を視界に収めるのだった。
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