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でも、僕はこういう時に気の効いた返しが出来る程のボキャブラリーも、ユーモアセンスも無い。
ただただ困惑するしかなく、僕がどう返そうか言葉に詰まっている間にも次第に空気は重くなり、そして、
「……って、アレ?ちょっと……奏君!? ここ!ツッコむところだから!」
と、焦る佐々木結衣。
「……え? あぁ、ごめん……」
「やだもう、めっちゃ恥ずかしいぃ〜。変な汗かいちゃった」
と、佐々木結衣は苦笑しながらTシャツの胸の辺りを摘んでパタパタと胸元を扇ぐ仕草をしている。
「いや、でも、ほら……佐々木さんが可愛いのは事実だから……」
と、なんとかフォローの言葉を絞り出すと、「まぁ、それはそうなんだけど」と清々しい程の全肯定が返ってきた。
でもその直後、今度は何故か表情をスッと真剣なものへと切り替えると、今度は僕の方へ視線を向け、じっと見つめてきた。
(……え?何?)
「……でもね、奏君。それはちょっとだけ違うんだよ?私は可愛かったんじゃなくて、可愛くなったんだよ?誰もが羨み、誰もが振り向くような、そんな魅力的な女の子を目指して必死に努力してきんだよ? 誰かさんの為に、ね。 そもそも私がアイドルを目指したのもその為。私の事を知って、私の事を見て欲しかったからだよ?その為だけに私はこれまで頑張ってきたんだよ?」
と、何故か疑問形で構成されたその言葉の意味を僕は全く理解出来ていない。
誰かさんって一体誰の事だ?
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