第三話

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 ただ、女子とここまで視線を合わせる事に慣れていない僕の心内は相当騒がしい。  心臓がバクバクと脈打ち、何かに――いや、〝佐々木結衣〟という魅力に溺れていく。奪われていく……。  ゆえに、防衛本能とばかりに再び視線を逸らしそうになる。が―― 「逸らさないで」  と、やはり彼女は逃がしてくれない。まるでスパルタだ……。  画面越しに見てきた彼女からはまったく想像できないSっ気に、驚愕と動揺が入り混じる。 「……うん」  先程の『整形』と言いかけてしまった贖罪の意を込めて、言われた通り改めて視線を彼女の瞳へと集中させると、その口はおもむろに開いた。 「あの頃と変わらない、穏やかで優しい目……。でも、あの頃みたいなキラキラは無くなっちゃってる。卑屈で臆病。自分の事が嫌いで苦しんでるような目。どうして?奏君……君は自分が思っているよりもずっと素敵な男の子なんだよ?」
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