第三話

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 彼女にそう聞かれ、僕はコクリと即時首を縦に動かす。  すると彼女は、人差し指を口元に当てて「うーん……なんか、こうも平然と覚えてないって言われるのも悔しいっていうか、簡単に教えたくないっていうか――、うーん。どうしよっかなぁ……」と、ムスっとした表情で思案するポーズを取ると、その直後「あ、そうだ!」と何かを閃いたらしく、その後をこう続けた。 「それじゃあ、私の事〝佐々木さん〟じゃなくて〝結衣〟って呼んだら教えてあげるよ」  と、悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう告げた。 「……ゆ、……ッ!」  突如として浮上した、あの〝佐々木結衣〟と僕との繋がり説。  そんな夢のような荒唐無稽な話の真相を知りたい一心で即座に試みるも、ただでさえ女子に免疫の無い僕にはやはり相当難易度が高かったらしく、いくら本人から了承を得ていたとしてもそう容易く口に出来やしなかった。 「……はい、不合格。 残念!またの挑戦をお待ちしておりまーす! じゃあね〜」と、彼女は揶揄うような笑みを浮かべると、手を振り部屋の中へと帰っていった。
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