第四話

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第四話

 ブロロロロ……  粗いエンジン音に、奥へと伸びる車内風景、お尻に伝わる強い振動、揺れ。  どうやら今僕はバスに乗っているようだ。と、その状況を把握すると同時に、  ――あぁ、またこの夢か。  と、これが夢である事を悟る。  ただ。そう冷静に『これは夢だ』と感じ取る自分とは別に、この夢の世界に没頭する自分もまた同時に存在している。  今――夢の中での僕は7歳である。    青い空、入道雲、田園風景。  窓に流れる夏の風景を眺めながら、幼心に募るのは不安と恐怖心。  そして隣りへと視線を向ければ同い年くらいの女の子が泣いている。  そして、この女の子の存在が、今の僕の行動原理。  ――僕がこの子を守らなきゃ!  幼心に芽生えたその強い意志で、僕は僕の中で必死に戦っていた。  ――そう。この時の僕は〝小さな勇者〟だった。  
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