第五話

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「……なんで、僕なんかと……?」 「う〜ん……それは……」  僕の問いに少し困ったような笑みを浮かべた佐々木結衣は、少し考える間をあけて、 「……隣人、だからかな……?」  と、歯切れ悪そうにそう言った。  その言葉は僕の心をチクリと痛くした。  ――隣人として……か。  そうだ。  その通り。  僕だってそのつもりだ。  期待なんて、これっぽっちもして無い。  だから大丈夫だ。  ……でもやっぱり、ちょっとだけ痛い。 「そ、そうだよね! うん!隣人同士、仲良くしよう!」  出来るだけ明るく振る舞うよう努める。もちろん落胆を隠す為の空元気だ。  ただ、当たり前だけど自分では自分の事を客観的に見れやしない。  大丈夫だろうか。  ちゃんと、中で起きた落胆は隠せているだろうか?  哀愁は漂っていないだろうか? 「――ところでさ。私の名前は下で呼べるようになったの?」  胸中騒がしくしているところへ、今度はそんな言葉が飛んできた。 「……え?」  その言葉に僕は固まる。  まったく、『宿題はちゃんとやったの?』みたいに言わないで欲しい。(確かに昨夜そんな事を言ってはいたけど……)  無論、そんなの無理に決まってる。
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