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「……僕に、お願い?」
一体、何事だろうか。
「うん。奏君にしかできない事で、奏君じゃなきゃ駄目な事だよ」
僕じゃなきゃ駄目な事?……本当に、何の事か皆目見当もつかない。
「それって一体……?」
そう聞いみると、彼女は窺うような上目遣いで、
「私と、将棋、しない?」
と、句読点多めの辿々しい口調で言ってきた。
うん。ヤバい。やっぱ、死ぬほど可愛い。と、それはさて置き……
なるほど。今の唐突に出てきた〝将棋〟というワードで、話の方向性は分かった。
だが、まだその全容は全くもって不透明だ。
「……将棋?」
とりあえず話の腰を折らぬよう流れのまま疑問形で返す。
「うん。正確にはペア将棋。 えっとね、その……奏君に、私の、パートナーになって欲しいの。……ダメ、かな?」
(だから、その上目遣いは反則だよ。可愛過ぎだよ。そんな目で見られて断れるわけないだろ!……さてはこの女、分かっててやってるな?)
……しかし、まぁ、ペア将棋ときたか。
ペア将棋とはまさに二人制将棋の事。言うなれば将棋のダブルスだ。
パートナーとは一手毎に交代で指していく。
どこでどう知り得たのかは不明だが、僕の将棋の腕を見込んでの勧誘という事か。
なるほど。それなら僕の名前を知っていたのも頷ける。
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