第六話

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「……僕に、お願い?」  一体、何事だろうか。 「うん。奏君にしかできない事で、奏君じゃなきゃ駄目な事だよ」  僕じゃなきゃ駄目な事?……本当に、何の事か皆目見当もつかない。 「それって一体……?」  そう聞いみると、彼女は窺うような上目遣いで、 「私と、将棋、しない?」  と、句読点多めの辿々しい口調で言ってきた。  うん。ヤバい。やっぱ、死ぬほど可愛い。と、それはさて置き……  なるほど。今の唐突に出てきた〝将棋〟というワードで、話の方向性は分かった。  だが、まだその全容は全くもって不透明だ。 「……将棋?」  とりあえず話の腰を折らぬよう流れのまま疑問形で返す。 「うん。正確にはペア将棋。 えっとね、その……奏君に、私の、パートナーになって欲しいの。……ダメ、かな?」 (だから、その上目遣いは反則だよ。可愛過ぎだよ。そんな目で見られて断れるわけないだろ!……さてはこの女、分かっててやってるな?)  ……しかし、まぁ、ペア将棋ときたか。  ペア将棋とはまさに二人制将棋の事。言うなれば将棋のダブルスだ。  パートナーとは一手毎に交代で指していく。    どこでどう知り得たのかは不明だが、僕の将棋の腕を見込んでの勧誘という事か。  なるほど。それなら僕の名前を知っていたのも頷ける。
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