第七話

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第七話

 ――次の日の夜。  昨夜、結衣にペア将棋のパートナーになって欲しいと頼まれ(脅され)、ならまずはお互いどんな将棋を指すのか、ペアとしての呼吸合わせの目的で模擬戦をしようという事になった。  もっとも、結衣は既にもう僕の指す将棋の形を分かっているようで、ただ単純に僕との対局を楽しみにしているようだった。  そして今、僕は結衣の住む部屋を前にビビっている。 「……すぅー、はぁー……」  この緊張と昂ぶりをどうにか鎮めようと深呼吸しても効果は得られず、ならばと、落ち着きを得る方向性から意気込む方向性へと考えをシフト。  己を奮い立たせ、「よし」と一言、いざ、震える指先で呼び鈴を鳴らす。  ピンポーン。  呼び鈴がドアの向こうで響くと同時に、タッタッタという足音が迫ってきて、ガチャっと鍵の音と共に扉が開いた。 「いらっしゃい」  すると結衣の天使のような笑顔が出迎えてくれた。が、その姿は〝童貞〟という人種に該当する僕にとって、あまりにも刺激的過ぎた。
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