第十一話

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第十一話

 気付けば時計の針は22時を指していた。 「じゃあ、そろそろ僕は帰るよ……。」  もう少し一緒に居たい気持ちにどうにか蓋をして、そう切り出すと、結衣が言う。 「え? もう帰っちゃうの……?」  と、まるで寂しそうな、縋るような目で……。  その顔……ホント、つくづくずるいと思う。 「でもほら、もうこんな時間だし……」  と、時計を指差しながら言う僕も、まだ結衣とこうして一緒に居たいというのが本音。  でもやはり、こんな夜更けに女性の部屋に居続けるのはさすがにまずい……。  ――いや、別に、何か男女の間違いとかがあり得るとか、そういうのを考えたわけじゃないよ?  そもそも僕は〝男〟として見らていないと思うし。  だから、こうやって無防備に部屋へ上げて貰えているのだろうし……。  でも、それはそれで果たして〝男〟として喜ばしい事なのか、ちょっぴり複雑な心境でもあるけれど……。  でもまぁ、逆を返せば信頼されているとも言える。ここはプラスに考えるようにしよう。    ……ただ、ね?  僕だってこれでも一応は〝男〟やってるんです。  ……だから、僕だって、夜になれば狼にだってなれる()()なんです……。がおー。何つってね(てへぺろ)
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