第十一話

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「……うん。そうだよね……」  と、僕が言った言葉に対し結衣は残念そうに俯いた。  よほど信頼を得ているのか、まるで僕に帰って欲しくないような素振りだ。  いつの間にこんな信頼をと、驚きつつ、嬉しい反面、でもやっぱりちょっと複雑。男としてね。   「……んー。じゃあ……もう一局、やる?」  そう申し出ると、結衣の表情がパッと明るくなった。 「うん!やろう!……でさ、いっそもう――朝まで……とかは……さすがに……だよね?」  勢い余ってか、とんでもなく破天荒な事を口走ったと思ったが、直後どうらやら我に返った様子で段々と口ノリが辿々しく弱くなっていき、最後は申し訳無さそうに――でも、必殺上目遣いは忘れない。……本当、ここまでくるとまるで蛇に睨まれたような気分だ。 「え?!朝まで!?」  いつもは敗北を喫しているこの上目遣いだが、今回ばかりは耐え忍ぶ。  さすがに若い男女が朝まで同じ空間はまずいだろう。  さすがの僕も狼になっちゃう……って、  ――え〝!?   お前にそんな度胸は無いって!?そんな馬鹿な!僕だって一応は〝男〟なんだ!だから僕だっていざとなれば狼にだって――(以下略)
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