第十一話

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 と、冗談はさて置き、正直男女云々という懸念よりも、今日はまだ水曜日で、明日も学校という状況下でのオールナイト将棋がちょっとしんどい……。  僕は夜型ではない。何なら既にもう軽く睡魔が襲ってきているくらいだ。  でも結局は…… 「――駄目?」  結衣の更なる追撃により―― 「わ、分かったよ……」  無事陥落。 「やったー!! じゃ、ハイ。早速――と、お願いします!」  結衣は嬉しそうに将棋盤の前へと俊敏な身のこなしで移動するとそこへ正座し、一礼をした。 (まったく、どんだけ将棋好きなんだよ!)  僕はこれ見よがしに頭を掻きながら将棋盤の結衣の座る対面側へと腰を落とす。  本当は嬉しいのに、こうした仕方なしの体の態度を取るところがさすが陰キャ。我ながらつくづくずるいと思う。 「……お願いします」  こうして、長い長い二人だけの夜が始まったのだった。
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