第十一話

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『ねぇ、おじさん。このバス、〝お魚センター〟の所まで行く?』  ふと気がつくと、僕はバスの運転手を相手にそう口にしていた。  どうやら、また、()()()らしい。  ――それにしても、最近見る頻度がより一層増えたような気がする……。   『ん? あぁ、行くよ。……おや?少年。デートかい? まったく、最近の小学生はませてるねぇ』  バスの運転手は僕の隣りに立つ迷子の少女を見て、そう冷やかすような笑みで言ってきた。 『……でーと?』 『――ち、違うよ!おじさん、変な勘違いしないでよっ!』  〝デート〟の意味が分からない様子で首を傾げる迷子の少女と、その意味を理解し、咄嗟に否定する僕。  しかし、バスの運転手はまるで微笑ましいものを見るかのような笑顔で『はいはい』と軽くあしらうように言うとバスの進行方向へと顔を向けた。  僕はその態度に『もうっ、違うってば!』と、ムスっとしながら再度否定し、迷子の少女へと振り向き『行こ!』と、その手を引いてバスの奥の方へと進む。
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