第十二話(結衣視点)

2/6
前へ
/64ページ
次へ
 そんなわけで私は奏君への愛を原動力に頑張った結果――〝トップアイドル〟と呼ばれる存在になれた。(頑張ったと言っても枕営業とかはしてないからね?)  しかも〝日本一可愛い女の子〟なんて二つ名まで付いた!!(いや、だから整形はしてないって!)  とにかく、今の私ならもう充分〝夢〟を〝現実〟に出来るはずだ――と、そんな自負が芽生えた頃合いに芸能界引退を決意し、そして私は次なるステップへと移行する為に奏君の住む家の隣りに引っ越して来た……というわけ。    ――え? 何で奏君の住む場所、通う高校まで分かったかって?  いやいや。  その為に、探偵(プロ)がいるんでしょ?  探偵さんへ依頼した内容は奏君の住所と通う高校のリサーチ。あと、彼女の有無だ。  でも探偵さん、注文した分の調査報告を終えると続けて「この情報はサービスです」って言ってから私の耳元である事を囁いた。  ――ターゲットはまだチェリーなようですよ。  ハッと探偵さんの顔を見ると、白い歯を覗かせて親指を立てていた。  ――そのさくらんぼ。他に取られないようしっかりと掴み取るんですよ?  そして私も決意の表情でそれに応える。  ――えぇ。もちろんです!奏君のさくらんぼは、私のこの手で必ずもぎ取ってみせます!  そう言って、サムズアップする探偵さんへ、私は自分の顔の前でパーからグーへと〝掴み取る〟仕草をして見せ、必ずやり遂げると。そう探偵さんへ誓いを立てたのだった。  それにしても……奏君……。  良かった。まだ童貞で……。 「…………♡」  ――あ、やばい。鼻血出そう。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加