第十二話(結衣視点)

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 それはそうと、芸能界への未練は無いのかって話だけど。  ないよ?  あるわけないじゃん。芸能界に未練なんて。  そんなのこれっぽっちも、1ミクロンも無い。  むしろ、〝イケメン〟から始まる俳優とか、アイドルとか、歌手やスポーツ選手……その他諸々多方面の業界人達からのしつこい言い寄られが無くなって、清々してるくらい。  てゆうか、()()()()て……(笑)  確かに世間一般的に彼等はそう呼ばれてるけれど……。  悲しいかな。私には結局ただのイケメン(ナルシスト)にしか感じ取れなかったんだけどね!  ――え? 私にとってのイケメン?それはどんな人かって?  ……()()()……人……?   うーん……違うな。そもそもが違う。私にとってのイケメンとは複数を指すようなものではない。  つまり、そう――吉本奏君(イケメン)!――以上!!  ………………コホン。(落ち着け私)    え〜と……さすがに引いたでしょ?(笑)  でもこれが本当の私。本性とでも言おうか。  もちろんこんなキモい私を奏君に悟られるわけにはいかない。  だから私は必死に取り繕っている。奏君への溢れんばかりの想いをなんとか押し殺し、作り上げた〝佐々木結衣〟を演じているのだ。  お母さんが教えてくれた。  ――『男と言う生き物は追っては駄目よ?追わせなさい』――と。  あの日、奏君に出会ってからの私の頭の中は奏君でいっぱいだ。  本当に……好き過ぎて……奏君の事を想えば想う程に、幸福感が胸を満たす。  同時に不安もある。  もし……この恋が叶わなかったら……?振られたら?  その時、私は一体どうなっちゃうんだろう……?  そう思うと胸が痛くなる。  ――つらい。これもまた私の本音である。
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