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私は彼を頼る事にした。というか、私には彼を頼るしか無かった。縋るしか無かった。信じて託すしか無かった。
正直、不安は消えなかったが、でも恐怖心はだいぶ柔らいでいた。
彼の先導の元、再びバスへと乗り込むと、私は彼の隣りに座った。ひと時も離れたくない、その一心で。
すると彼はこちらを向き、
『大丈夫。必ず僕が君の家まで送り届けるから。だから、安心して?』
と、そう言って微笑んだ。
『……うん』
その笑顔はとても心強く、絶望に満ちていた心にようやく希望の光が差し込んできたように思えた。
気付けば私は彼の手を握っていた。だが、彼のその手は震えていた。
――あぁ、彼もまた恐いんだ。
私達はまだ親の先導なくして動くにはあまりにも幼い。
その事を改めて痛感させられた瞬間だった。同時に、私が初めて〝恋心〟というものを知った瞬間でもあった。
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