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嬉しく思っているのか、厄介事として捉えているのか、正直自分でもよく分からない複雑な心境だ。
ただひとつ確実に言える事は、例え佐々木結衣が隣りの席になったからと、それは完全なる他人事であり、僕の学校生活には何ら影響は及ぼさないという事。
この機をチャンスと捉え、あの佐々木結衣とお近づきになろうだとか、なりたいという願望すら持つ事はない。生憎、そんな野心を膨らませる程僕は自分を高く評価していない。
たぶん会話すら無いだろう。
最低限挨拶を交わすだけ。現に今日も、最初の「よろしくね」以降は一言も話さなかった。
「……またっく。何考えてんだ僕は」
佐々木結衣について、あーだこーだと考えてる事自体、憚られる思いだ。
自分には関係無い事だと、そう頭の中で区切りをつけると、僕は星を見上げながらホットココアを飲んだ――と、その瞬間だった。
「あれ?」
突然、僕の左側の鼓膜を鈴音のような美声が震わせた。
振り向くと、その声の主は隣室のベランダに居た。
「あ、やっぱりそうだ!こんばんは。吉本君」
と、そこにあるはずのない〝日本一可愛い〟微笑みが、僕の事を見つめていた。
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