【短編版】女手一つで育て上げた娘が嫁に行き、あとはゆっくり余生を過ごそうと思っていたら、年下の公爵様に見初められました

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アリアの結婚式が無事に終わり、私は一人帰路についた。  古びた木造一間の小さな家。昨日まで娘と二人で居た空間。 「……寂しい」  夕暮れから夜闇へ移り変わり、部屋に暗い影が落ちる。  私は蝋燭に火をつけ、夕食の準備に取り掛かろうとするが、 「……今日はもう疲れたわ」  料理への意欲が湧かない。  結婚披露宴で出されたご馳走のおかげでお腹も空かないし、今日は早めに寝よう、と自分に言い訳をしてみるが、その実、自分一人の為に作った料理を一人で食べる事で、今ある侘しさに拍車がかかりそうな気がしただけ。  娘がいれば食事を作る張り合いも自然と出るが、自分一人だと、そうもならない。  私はつけたばかりの蝋燭の火に息を吹きかけ寝床に潜り込むと侘しさから逃げるように眠りに落ちた。
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