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「じゃあ、お父様はお母様と山に登ったのかしら」
「おー、それはそれはいいところつきましたな。もちろん父さんは付き合う前……かどうかしらんけども一緒に山登ったらしい。ミクちゃんと同じく初心者だった母さんは高山病になって途中で下山したらしい」
「あら、じゃあ……お父様はなんでお母様を?」
とミクが門倉をじっと見る。
そういえばそうだよな、父親は自分よりも登山が好きすぎる男だった。
母親はそれがきっかけでもう登山はしなくなったのだが。
「高山病は残念だったけども母さんの準備や計画がしっかりしていたとのことだよ。父さんも几帳面でなかなか堅物でね。それで辟易して振られることが多かったけど同じく几帳面な母さんは父さんを理解してくれた……それに趣味で山に登ることにも理解してくれた、だから付き合うことにしたって」
門倉は父から何百回も聞いたエピソードだったという。
だから話し方も声色もなんとなく父親に似ている、と実感するのであった。
「ミクちゃんも初心者なのに着いてきて無事に辿り着いてきてくれた。しかもこの日のために服も装備品も買ってくれた。すごいね」
やたらと褒め倒す門倉に対してミクはいやいやーという顔はなんとなく彼の思っていたこととは違ったのではないかと思うくらいの否定だった。
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