君と登山する理由

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「あんたアホだわ、だから結婚どころか恋人もできないわけよ」 半年後、門倉はまた山に登っていた。今度は昔から不定期に登山をする友人でもあり、先日のエピソードに出てきたツンとしたやつ……摩耶と一緒だ。 摩耶は門倉の誘いで山が好きになり進路は別になったが違う学校の登山サークルに入部して海外にも行くほどであった。今は登山インストラクターもしている。 休みが互いに合えばどんな山でも登りに行く。 「いや、何がアホかわからん……」 「そこがアホよ。現にミクちゃんに振られてるし。あの子もアラサーで婚活必死だったからどこが好きかわからんけどもあんたとお付き合いして結婚するためにも無理やり趣味合わせて装備買って挑んだのに過去の女の話……」 「ミクちゃんはたしか一度顔がタイプって言ってた気がする」 摩耶は呆れていた。ため息も出ない。 かという摩耶も結婚していない。彼氏もいない。ツンとした性格も仇になっているが本人曰く山と結婚したと。 「そもそもあんたみたいな登山バカがど素人の女と釣り合うわけないわ」 「いや、父さんと母さんの例もあるし」 「何言う。お母さんも痺れ切らして病気のお父さんと離婚して第二の人生歩んでるらしいじゃない。ずっと山山山ばかりで家族サービスも全くしなかったからって」 「……おっとそうでした」 幼馴染ともあって家族の関係もすぐ伝わってしまう。 「恋愛や結婚に山を持ち出すのはタブーよ。でも……相手が山を知り尽くしていれば……」 門倉はン? と聞き返すが摩耶はなんでもない、と。 「ちょっと俺あっちでしょんべんしてくるわ」 「じゃあその後、下山しましょう」 「おう」 門倉の背中を見て摩耶は小さな声で 「山素人の女よりも私っていう登山バカが近くにいるじゃない……あんたは昔から鈍感であけっぴろげでさぁ」 と……。 摩耶が結婚できなかったのも初恋が門倉で。それをツンとした自分性格で伝えられずそのまま拗らせてしまったのも理由の一つであった。
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