君と登山する理由

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そんなふうに摩耶が呟いているというのを知らないように装っていた門倉。 彼も彼で 「まあ摩耶ならさ登山もペースが合うし色々知り尽くしてるし気兼ねなく話せるからいいとは思うんだけどなぁ……かと言ってこのタイミングで付き合う、とか言うのもさぁ。なんか無難で落ち着いたなぁって思われそうだし……互いに40超えちゃったしなぁ」 と呟きながら用を足す。 なんだかんだで続いてるこの縁。 でも登山をして彼女の見る目が変わった門倉はそれ以降連れてきた女性の中でも引けを取らないくらい良かったのに、と思いながらも摩耶のところに戻った。 「遅かったな」 「悪い」 「手は洗ったの?」 「洗いましたよ、もう行くか?」 荷物を背負おうとした門倉に対し摩耶は荷物は置いたままだ。 「あと少し、あともう少し景色を見たい」 その言葉を発した摩耶に少し潮らしさを感じた門倉は 「あと少しな」 と笑って彼女の横に座った。 終
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