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第3章 王子4
王子様は、私が座るのを見届けてから自分の席へと戻った。椅子は、丸いテーブルの周りに三つ、均等に配置されている。私の右側がお母さん。彼はこれまた優美に、私の左側に腰を下ろした。
「僕のことは、先ほどあなたが言い当てたように『王子』と呼んでください。どこへ行ってもそう呼ばれていますのでね」
口調も上品で、音楽を聴いているような心地。優雅な笑みは、年下とは思えない。三人そろったからと、飲み物と料理を促す様子も、まるで生まれた時から王宮で暮らしているかのように慣れている。
三人だけになり、沈黙が訪れて、私はハッと我に返った。まだ、挨拶もしていない。
「あの、大変失礼しました。香原衣純です。今日はよろしくお願いします」
おや、と彼の眉が動いた。さっきから何も言わず見守っているお母さんに尋ねることには、
「彼女にはどこまで説明を?」
「あなたが衣純にぜひ会いたいと言っている、って」
「なるほど」
うん、確かにそう聞いた。彼がこちらを見たので、気になっていることを聞いてみた。
「お名前、ドイツ系なんですね。マサルというのは、もしかして漢字が?」
「ええ。優しいという字です。父方があちらの出身でしてね」
「そうなんですね。ぴったりのお名前だと思います」
優美、優雅も当てはまるもんね。お母さんかおばあちゃんが日本人なのかな。
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