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新生活13
「おっと」
「え? ……あ、一瞬寝てた」
脱衣所の鏡を見ながら、立ったまま髪を乾かしてた。ふっと意識が途切れたのを、通りかかった先生が抱き止めてくれた。
「うーん、やっぱりスパダリ……?」
「ンないいもんじゃないけどな。ほら、ここ座れ」
「ん」
この状況を予想してたのか、持ってきた椅子に私を座らせた。
「ドライヤー、貸して」
「ん」
あー、気持ちいい……。私の髪の乾かし方も分かってるし、この人がお義父さんっていうの、最高かも。
「柔らかいんだけど、曲者なんだよな……」
「んー?」
「髪のことだからな……」
「うん。……あ、ねぇ。私の部屋って、入った?」
「空気の入れ替えで、やむを得ず。誓ってそれ以上のことはしてない」
「ふふ、それ以上って何」
「知るかよ」
ほら、そういうとこ。むきになるの。ほかの誰かじゃなくて、あなたがお義父さんでよかった――。
そのあとのことは、途切れ途切れ。抱っこされて、階段を上がってるのが分かった。私の部屋は二階。先生は一階の和室を寝室にしているそうだ。
「頑張りすぎるのは変わってないな。これからは、ずっとついててやるから」
かっこいいセリフ。次に気が付いた時にはベッドに寝かされていて、おでこに柔らかいものが触れた。
「おやすみ」
「ん……」
おやすみ、だって。じゃあ明日は、おはようって言える? あなたが私の家にいるなんて……。
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